現在の町村農場を創業時と比べてみると、直営店舗が増えて生産から販売までを網羅 するという意味で事業の領域は大幅に広がっています。ただ、創業者町村敬貴の掲げた「土づくり、草づくり、牛づくり」の理念は今もなお、すべての取組みに深く根付いています。 町村農場のような都市近郊型酪農は地域社会との共生や共存を常に考えなければなりません。牛の排泄物から出る悪臭を抑えるために、日本で初めて本格的な農家単独設置型のバイオガスプラントに着手したのは2000年。糞尿を発酵させて生まれるメタンガスを使った自家発電。ガスを取り出した後の糞尿は良質な有機肥料として活用します。
こうした取組みは、今でこそ注目されていますが、自然エネルギーが脚光を浴びるずっと以前に町村農場は「地城社会との共生の取組みとしてこうした問題に向き合っていたのでした。 このバイオガスプラントで作られた消化液を牛の食べる草づくりに使い、自家発電された電力は町村農場全体で使う電力のおよそ半分を補っています。時代に対応し、新技術を駆使しながら「土づくり、草づくり、牛づくり」という本来の地域循環型農業に取組んでいるのです。
2017年で、町村農場は創業100年目を迎えました。地域での存在感が根付いてくるにつれ、この地域この町内の人々の暮らしに貢献できることはないかということを町村農場は考えるようになりました。「江別の地域自体が盛り上がるような取組みを地域の人々と手をたずさえて挑んでいきたい」その取組み例が、農場内のミルクガーデンで開催するコンサートなどの文化催事であり、江別市内の農業生産者や食品加工会社との商品開発なのです。
「江別は、農村地域としてとても高いポテンシャルの作物を作 農家が多くいて、製粉・製麺・肉加工など道内でも指折りの優秀な食品メーカーもある。素晴らしい地域なので、まだまだやれることがたくさんある。これからが面白いんです。」
町村農場は、この江別という地域で、「農を基盤とした新しい都市近郊型農村のあり方を模索しているように思えます。そこには創業念をかたくなに守りつつ、地域とともに成長するという創業時からの「土づくり、草づくり、牛づくり」に対する「熱い思い」がありました。